2020年2月12日水曜日

佐野一族



館山市内の、のんびりとしたとある漁村、潮の香りがかぐわしい。


膝くらいしかない浅場に黒鯛の群れ。

・・・この場所は「佐野」という名字の人しか住んでおらず、佐野一族の部落である。まだ土地勘の浅い僕にとって、配達をするには困難極まりない場所である。

「佐野さんの所に配達行ってきて」と言われるたびに青くなる。だって佐野さんしかいないし。どこの佐野さんだよ。

この日配達をした佐野さんは、耳の遠い老婆で、話がほとんど通じない。

「灯油入れに来ました」

「あ?」

「灯油を入れに来ました」

「ああん?」

「だから灯油を入れに来たんだってばよ!!!」

「はあ??」

・・・話にならねえ。

・・・一体何のために危険物免許を取ったのかと、ふと疑問に思う。移住する前に、たった一度のチャンスに賭けて、それはもう必死で猛勉強した。その資格をこんな場所で行使する事になるとは・・・

ま、仕事は楽しいからいいんだけどね

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