佐野一族
館山市内の、のんびりとしたとある漁村、潮の香りがかぐわしい。
膝くらいしかない浅場に黒鯛の群れ。
・・・この場所は「佐野」という名字の人しか住んでおらず、佐野一族の部落である。まだ土地勘の浅い僕にとって、配達をするには困難極まりない場所である。
「佐野さんの所に配達行ってきて」と言われるたびに青くなる。だって佐野さんしかいないし。どこの佐野さんだよ。
この日配達をした佐野さんは、耳の遠い老婆で、話がほとんど通じない。
「灯油入れに来ました」
「あ?」
「灯油を入れに来ました」
「ああん?」
「だから灯油を入れに来たんだってばよ!!!」
「はあ??」
・・・話にならねえ。
・・・一体何のために危険物免許を取ったのかと、ふと疑問に思う。移住する前に、たった一度のチャンスに賭けて、それはもう必死で猛勉強した。その資格をこんな場所で行使する事になるとは・・・
ま、仕事は楽しいからいいんだけどね
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