2022年6月18日土曜日

恐怖その2

 先のいきさつにて、嫌々ながらスズメバチの駆除をしなければならなくなった。

実際この戦いに踏み出すには綿密な攻撃プランと、あらかじめ逃げ道を確保、そして何よりも勇気と気力が必要となる。これまでさんざん世話になったクモやハガチやダンゴムシとはワケが違う。

武器はコイツだけ。ハチを瞬殺できる猛毒がすっさまじい勢いで噴射されます。あとは戦いの夜を待つだけ。


夜、いざ巣に近づくと、さすがに緊張する。殺虫剤を噴射する距離と角度を何度も確認しながらも、「やっぱ明日にしようかな」などと甘い考えが頭をよぎる。

もう考えてもしょうがないので、一気に攻撃を仕掛けた。が…

「・・・あれ??」

あらかじめ決めておいた角度から殺虫剤をこれでもかとタップリ吹いてやったが、巣の方からは何の反応もない。

「・・・・もう終わりか??」

「あっけないな。ざまあみろ」

と思ったその瞬間、「ブ~ン」というあの恐怖の羽音が聞こえて、あのオレンジ色の頭がこっちに向かってくるではないか!!

「・・・・!!!!!」

オレンジの頭に向かって殺虫剤をもう一撃くれてから、一目散に玄関に走って、戸をバアンと強く閉めた。

この時の僕は、競馬に例えるならば上がりハロン最速で、間違いなくコースレコードをマークするスピードで一番人気に応えていたはずである。

奴は間違いなく猛毒を食らっているはずだが、すぐには死なず、玄関の向こうから何度もバチンバチンとアタックしてくる。この上ない恐怖の時間でした。やがて羽音が弱くなって、どうやら息絶えたようである。

翌朝・・・


怒りのスズメバチの亡骸が玄関前に落ちていた。おそらくは、猛毒を食らいながらも最後の力で攻撃を仕掛けてきたに違いない。

時間にしてほんの数秒の出来事だったが、この事は南房総に移住して以来、最大の恐怖の記憶となった。その日の夜は、スズメバチの巣が木端微塵に吹っ飛ぶ夢を見た。

・・・ともあれ、これで隣のおじいちゃんも安心して天に召されるというものであろう(笑)


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